謙譲語 Iとは何ですか?
謙譲語 I (けんじょうご いち) は、文化庁 2007 年「敬語の指針」第 2 類に分類された敬語で、「自分の動作・行為を低めることで、その動作の向かう先 (相手) を相対的に高める」働きをします。代表例は「伺う」「申し上げる」「拝見する」「お目にかかる」「差し上げる」など。動作には必ず「向かう相手」が存在するのが特徴で、相手のいない動作 (一人で帰宅する等) には使えません。ビジネスメールでは、相手の元へ訪問する・相手の資料を見る・相手に何かを渡すなど、ほぼ全ての依頼・報告・お礼の文面に登場します。謙譲語 II (丁重語) との混同は経験者でも起こりやすく、「向かう相手がいるか」を判定基準にすると安定します。
- 分類
- 文化庁 2007 年「敬語の指針」第 2 類
- 読み方
- けんじょうご
- 敬意の対象
- 自分の動作
- 代表的な動詞
- 行く→伺う、来る→伺う、言う→申し上げる
- 最頻ミス
- お伺いさせていただきます
どんな場面で使いますか?
- 相手のところへ訪問・連絡する動作を述べるとき (例: 明日伺います)
- 相手の資料・発言を受け取る・理解する動作を述べるとき (例: 拝見しました)
- 相手に物を渡す・お知らせする動作を述べるとき (例: 資料を差し上げます)
- 相手と会う場面を予告するとき (例: お目にかかれるのを楽しみにしております)
動詞の変換表
メールで頻出する動詞の謙譲語 I形。代表形を 8 個収録しています。
| 通常形 | 謙譲語 I形 | 別形 (任意) |
|---|---|---|
| 行く | 伺う | 参上する |
| 来る | 伺う | — |
| 言う | 申し上げる | — |
| 見る | 拝見する | — |
| 聞く | 伺う | 拝聴する |
| 会う | お目にかかる | — |
| もらう | 頂戴する | 賜る |
| あげる | 差し上げる | — |
ビジネスメールでの例文
明日 14 時に貴社へ伺います。
「伺う」は「行く」「来る」「聞く」の謙譲語 I。動作の向かう先 (貴社) があるので適切。
ご送付いただいた資料、本日拝見しました。誠にありがとうございます。
「拝見する」は「見る」の謙譲語 I。資料を送ってくれた相手への敬意を示す。
詳細は別途ご連絡を差し上げます。
「差し上げる」は「あげる」の謙譲語 I。連絡の向かう先 (相手) があるので使える。
佐藤様には来週改めてお目にかかれればと存じます。
「お目にかかる」は「会う」の謙譲語 I。直接面会する場面の予告に使う定型表現。
よくある間違い (5 つ)
✗ お伺いさせていただきます✓ 伺います
「伺う」自体が謙譲語。「お+伺う」+「させていただく」で謙譲を 3 重にしている典型例。
✗ 拝見させていただきました✓ 拝見しました
「拝見」は既に謙譲語。「させていただく」を加えると謙譲が重複する。
✗ 申されました✓ おっしゃいました (尊敬語) / 申し上げました (謙譲語 I)
「申す」は謙譲語 II で自分側の動作。相手の発言には使えない。「申される」は尊敬の付加で混乱を招く。
✗ ご返事申しあげます✓ お返事申し上げます
「ご返事」は誤り。「返事」は和語起源なので「お」が付くのが標準 (「ご回答」は漢語なので「ご」)。
✗ 頂戴いたします✓ 頂戴します / 頂きます
「頂戴」自体が謙譲語 I。「頂戴+いたす (謙譲語 II)」は重複と判定される運用が一般的。
丁重語 (謙譲語 II)との違いは?
謙譲語 I は「向かう相手がいる動作」、丁重語 (謙譲語 II) は「向かう相手がいない動作の丁重表現」。「(誰のところへも行かず) 一人で参ります」は丁重語、「(貴社へ) 伺います」は謙譲語 I です。
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